サウナでも起こり得るヒートショック現象の危険性と対策方法

冬場になると毎年のように話題にのぼるヒートショック。特に65歳以上の高齢者においては交通事故よりもヒートショックで亡くなる方が多く、各自治体からも注意喚起が出されています。

ヒートショックは自宅のお風呂場やトイレなど、暖房の効いた部屋に比べて極端に気温が低い場所で起こりがちです。温泉やサウナなどの温浴施設はエントランスや更衣室も暖房が効いているため、浴場との温度差が小さくヒートショックは起こりにくいとされていますが、リスクはゼロではありません。サウナ施設の場合はサウナ室と水風呂との温度差が大きいので、若い人も入り方に注意する必要があります。

この記事ではサウナにおけるヒートショックの危険性と、予防するための入り方について解説します。ニュースやSNSの情報を見て不安を感じられている方も多いかと思いますが、ヒートショックの原因や対策を知って、安心してサウナを楽しみましょう♪

ヒートショックとは?

ヒートショックとは、急激な温度の変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管の疾患が起こることです。心筋梗塞や脳卒中など、命に関わるほどの健康被害を引き起こす場合もあり、実際に毎年多くの方がヒートショックで亡くなっています。

ヒートショックの事故件数

厚生労働省の人口動態統計によると、溺れて亡くなる65歳以上の高齢者の数は年々増加しており、令和4(2022)年の1年間には7,900人が亡くなったとのことです。そのうちの約8割にあたる6,307人は浴室で亡くなっており、その中でも家や居住施設の浴槽での事故が9割以上を占め、5,824人が亡くなっています。


出典:消費者庁

 

具体的に何が原因で溺死したのかまではわかりませんが、東京消防庁の月別の救急搬送データによると、11月から2月にかけての冬場に事故が多いことがわかります。


出典:消費者庁

 

このことから、浴室で溺れる事故の多くはヒートショックが原因ではないか、と推測されています。

浴室でヒートショックが起こりやすい理由

 

ヒートショックの原因は、急激な温度差です。冬場に浴室でのヒートショックが増えるのは、暖房の効いた部屋とそうではない浴室との温度差が大きくなるから。特に10℃以上の温度差があると発生リスクが高まるとされています。

ヒートショックには大きく分けて、「山型」と「谷型」の2種類があります。血圧が急上昇する時に起こるのが山型で、血圧が急下降する時に起こるのが谷型です。

まず、暖かい部屋から寒い脱衣所へと移動すると、体の熱を逃さないように血管が収縮し、血圧が上がります。ただ移動するだけであれば家の中から外へ出るのと同じで、それほど危なくはありません。しかしお風呂に入る時は、冷えた脱衣所で服を脱ぎます。そして裸の状態で寒い浴室に入ると、さらに血圧が上昇。この時にヒートショックを起こしてしまうのが山型です。

谷型のヒートショックが起こるのは、お風呂に入った時です。お風呂に入ると血管が拡張するため、血圧が低下します。裸で寒い浴室に入り、血圧が急上昇した時にいきなり熱い湯船につかると、今度は血圧が急下降。寒さと熱さによる血圧の急変動がヒートショックを引き起こしてしまうのです。

さらに、お風呂から上がる時にもリスクがあります。入浴中は水圧により血管の拡張が抑えられている面もありますが、湯船から出ると水圧から開放されて血圧が急下降。また、座った状態から立つことでも血圧が低下してしまいます。特に長時間の入浴が危険で、お風呂でのぼせてふらついた経験はありませんか? これもヒートショックの症状である場合があり、若い人にも起こり得ますので、くれぐれも長湯のし過ぎにはご注意ください。

サウナでも起こり得るヒートショック現象

サウナ施設は受付や更衣室も暖房が効いているため、脱衣所で服を脱いで浴場に入る時のヒートショックリスクは自宅ほどではありません。問題はサウナ室と水風呂の温度差であり、冬場は外気浴との温度差もヒートショックを引き起こす可能性があります。

サウナでのヒートショック事故件数

サウナでのヒートショック事故について全国的に調査されたデータはありませんが、ひとつ福島県の郡山地方広域消防組合がまとめた統計があるのでご紹介します。

統計によると、2013年から2022年までの10年間で、サウナ中に体調不良を訴えて救急搬送された人の数は101人。年代別では60歳以上が71人(70.3%)、症状別では「失神・意識障害」が30人(29.7%)で最多でした。



出典:郡山地方広域消防組合

 

仮に「失神・意識障害」の原因がすべてヒートショックだったとすると、10年間で30人ということは毎年3人のペース。郡山市の人口は約32万人(2023年8月1日時点)ですので、単純計算で10万人に1人の割合です。これを多いと見るか、少ないと見るかは各人の判断に委ねますが、少なくともサウナでヒートショックは絶対に起きないとはいえません。

サウナでヒートショックが起こり得る理由

 

サウナで最初に急激な温度差が発生するのは、サウナ室に入った時です。仮に外気温が30℃あり、サウナ室の温度が80℃だったとしても、その温度差は50℃。80℃のサウナは比較的ぬるめの温度ですので、もっと大きな温度差があることがほとんどです。

しかし空気は水よりも熱の伝導性が低く、サウナ室に入ってすぐに体温が上がることはありません。100度を超えるサウナ室でもやけどをしないのは、皮膚に熱が伝わる速度が遅いからです。サウナ室ではじわじわと体温が上がり、お風呂に比べると血圧の変動も緩やかであるため、ヒートショックのリスクは低くなります。

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問題は水風呂です。高温のサウナ室で血管が拡張し、血圧が低下している状態で水風呂に入ると、冷たさと水圧によって血管が一気に収縮し、血圧が急上昇します。今では水風呂が大好きなサウナーの方も、最初の頃は心臓が止まるのではないかという恐怖を感じた覚えはありませんか? 慣れてしまえば気持ちの良い水風呂も、ヒートショックを起こしかねない温度差があるということを忘れず、必ずかけ水をしてゆっくり入るようにしましょう。

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冬場は外気浴にもご注意ください。上述の通り空気は熱の伝導性が低く、サウナ室で深部体温まで十分に温まっていれば、直ちにブルブルと震えるような寒さを感じることはありません。水風呂でクールダウンした後であれば皮膚表面で感じる温度差も小さくなり、ヒートショックのリスクは軽減されます。

冬場は水風呂をスキップして外気浴に直行するのも最高に心地よいです。が、急な温度差がヒートショックの引き金となりますので、水またはぬるめのシャワーで汗を流しつつ、体を慣らしてから外気浴をお楽しみください。

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ヒートショック対策とサウナでの注意点

自宅でできるヒートショック対策

ヒートショックを予防するには、急激な温度差を発生させないことが大切です。自宅においては脱衣所や浴室も暖かくしておき、リビングや寝室との温度差をできるだけ小さくしましょう。

お風呂場に暖房機器を設置することが一番確実ではありますが、置く場所がなかったり、工事が必要だったりと、そう簡単にはできない場合もあるかと思います。その場合はお風呂のお湯をためる時に、湯船のふたを開けておくと蒸気で気温が上がりますので、ぜひ実践してみてください。シャワーを使ってゆっくりお湯をためるのも効果的です。

お風呂に入る時は、いきなり湯船にドボンとつかるのは避けて、シャワーやかけ湯で手足の先(心臓から遠い部分)から徐々に温めるようにしましょう。寒いからといって、湯船に長く入りすぎるのも危険です。お湯の温度が高すぎるのも、深部体温が上がる前に皮膚表面の温度だけが上がり、お風呂から出る時にブルっと寒気を感じることがあります。ぬるめのお湯でじわじわと体を温めたり、休憩をはさみながら数回に分けて湯船につかったりするといいですよ。とにかく極端なことをしない、無理をしないことがヒートショック対策につながります。

サウナでの注意点と入り方

▲フィンランドのサウナ「Rauhaniemi」の水風呂と外気浴を兼ねる湖

 

サウナにおいても極端なことをしない、無理をしないことが大切です。

まず、サウナ室へ入る前には、必ずシャワーで体を温めてください。シャワーで身を清めることはマナーでもあり、頭皮や体の汚れを落とすことで発汗作用も高まります。ヒートショック予防になるだけでなく、良いサ活を行うためにも重要ですので、シャワーをあなどってはいけませんよ。

サウナでもっともヒートショックのリスクが高いのは水風呂です。サウナ室を出ていきなり水風呂にドボンするのは危険で、そもそもがマナー違反。必ずかけ水をして汗を流しながら、体を冷たい水に慣らしてから入りましょう。

心臓から遠い足元からゆっくり入るのも、ヒートショック対策になります。水流を立てずにじっとしていると、皮膚表面と水との間に温かい温度の層、いわゆる「羽衣」が生まれるため、心地よく水風呂を楽しめます。バシャバシャと勢いよく水風呂に入ると他の利用者の羽衣をはがしてしまい、迷惑がられてしまいますのでお気をつけください。

冬場は外気浴が最高の季節でもあります。水風呂をスキップして外気浴へ直行するのも非常に気持ち良いので、ぜひ試していただきたいところです。ただこの場合も必ず、サ室を出た後にシャワーを浴びてください。ととのい椅子に座る前に汗を洗い流すのがマナーであり、サウナと外気と温度差に体を慣らすためにも必要です。水風呂のかけ水だけをして外気浴へ向かうのもヒートショック予防になりますよ。

あとはお風呂と同じく、無理してサウナ浴を長くしすぎるのは禁物です。サウナで「ととのう」というのは、ふらふらするような状態ではなく、体がリラックスしていながらも頭がスッキリと冴えている状態です。ふらつきは転倒する危険もありますので、くれぐれも無理をせず、自分のコンディションと向き合いながら適度にサウナをお楽しみください。

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高齢者と基礎疾患のある方は十分にご注意ください

 

サ室へ入る前にシャワーで体を清める、かけ水やシャワーで汗を流して水風呂や外気浴を楽しむ、という基本を守ってさえいれば、ヒートショックのリスクは軽減されます。ただ、80~100℃という高温環境、そこから水風呂に入るという行為は普通ではありません。血圧の変動が大きく、心臓や血管に大きな負担がかかりますので、特に高齢者と基礎疾患のある方は十分にお気をつけください。

高齢者のヒートショックリスク

ヒートショックで亡くなる方の9割以上が、65歳以上の高齢者であると推測されています。血管の弾力性が弱くなったり、自律神経の働きが衰えたりと、年齢を重ねるにつれて急激な温度変化に対する適応能力が低下してしまうからです。また、体温調節機能が低下して暑さや寒さを感じにくくなり、適切な室温管理ができなくなってしまう方もいます。心はまだ若いと思っていても、体は正直に歳を取るもの。サウナに慣れていない方はもちろん、長年サウナに通い続けている方も自分を過信せず、無理なく安全な範囲でお楽しみください。

基礎疾患のある方は必ず医師に相談を

若い人であっても、心血管系の基礎疾患がある方はサウナの利用をお控えください。サウナは血圧の変動が大きく、心臓や血管、脳にも大きな負担がかかります。高血圧や動脈硬化、脳梗塞などの疾患を抱えている方は、ヒートショック以前にサウナそのものが危険です。糖尿病や不整脈なども事故のリスクを高めてしまいますので、決して自分で判断せず、必ずかかりつけの医師にご相談ください。

飲酒時のサウナは絶対NG

もはや言うまでもありませんが、飲酒時のサウナは絶対にダメです。アルコールは血流を良くしてくれる面もある一方で、それゆえに血管をさらに拡張させるサウナとの相性は良くありません。利尿作用により脱水症状を引き起こしやすくもなりますので、ヒートショックに関係なく飲酒時のサウナ利用は絶対におやめください。

体調不良でのサウナもNG

健康な方でも体調を崩している時は、心臓や血管の機能が弱まっている可能性があります。薬を服用したあとも、薬の作用で血圧が変動する場合がありますのでお控えください。サウナは体力を消耗するため、風邪気味でのサウナも逆効果です。体が疲れてウイルスへの抵抗力が弱まり、症状を悪化させてしまいます。体が弱っている時はヒートショックのリスクも増大しますので、自宅で安静に過ごしましょう。

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冬こそ最高のサウナを楽しみましょう♪

▲サウナヨーガン福岡天神の屋上外気浴「天空のととのいスペース」(2025年1月10日撮影)

 

事実として冬場はヒートショックによる事故が増えますが、急激な温度差に体をさらさないように気をつけることでリスクを低く抑えられます。サウナにおいてはシャワーやかけ水など、基本的なマナーを守ることがヒートショック予防につながります。「極端」と「無理」を避けて、冬も安全にサウナを楽しみましょう。

冬に極寒の地となる北欧フィンランドにサウナ文化が根付いているのは、やはり気持ち良いからではないでしょうか。時には凍った湖に飛び込むフィンランド人も、サウナ室を出たら水風呂ではなく外気浴でリラックスするのが一般的です。日本の冬もかなり寒くなりますし、場所によってはフィンランド並の低気温を記録するところもあります。冬こそ最高のサウナを、日本にいながら楽しんでみませんか?

平和台ホテル9階に併設されているサウナヨーガン福岡天神は、屋上に広々とした外気浴エリアがございます。ビルの10階に相当する天空のととのいスペースは体感気温がより低く、都会の風を浴びながら極上の外気浴を体験できます。福岡市地下鉄「天神駅」から徒歩8分の場所にあり、福岡への観光やビジネスの拠点としても便利です。福岡へお越しの際はぜひ、平和台ホテル天神およびサウナヨーガン福岡天神をご利用くださいませ。
※宿泊者以外の方も、予約不要でサウナを日帰り利用できます。

皆さまのご来店を、心よりお待ち申し上げております。

 

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